人間の注意力とは? 注意不足の原因と対策

今日、機械やシステムが高度化・複雑化し、一度問題が起きれば多大な被害が発生するようになりました。そのためシステムを多重化し、監視装置を設けるなど機械や装置の信頼を高めるように取り組んできました。
その一方、機械や装置を操作する人は変わりません。その結果、今日では機械や装置の信頼性よりも人の信頼性が問題となっています。
 
この人の信頼に関しては、「気がつかなかった」「見過ごした」などのヒューマンエラーの多くが不注意から生じています。では人間の注意力とはどのようなもので、いつ注意力が低下するのでしょうか。人間の注意力について、考えます。
 
図1 機械と人の信頼性

図1 機械と人の信頼性
 

人間の意識と身体的特性

覚醒水準

人はあることに注意を向ければ、それ以外のことは不注意となります。一方、意識がぼんやりしていれば、注意能力が低下します。
この人の意識がどのくらい明瞭になっているか、その程度を「覚醒水準」、又は「意識水準」と呼びます。これは全体の注意の容量を決める要因です。もし覚醒水準が低ければ、一所懸命注意しても、注意に振り向ける意識そのものが低く、全体の注意量が少ないため、注意が不足します。
この覚醒水準は、橋本邦衛氏が労働生理学を基に下記のように5つの「フェーズ」に分けました。
 

  • フェーズ0
  • 意識がなく脳がまったく動かない状態で、一般的にいう「無意識状態」、「失神状態」です。生理的には睡眠中や脳発作を起こしている状態が該当します。

  • フェーズI
  • 意識がぼけた状態で、注意や判断がうまく働かず、間違いを起こす確率が高い状態です。生理的には「疲労時」「居眠り」の状態が該当します。危険な作業や運転中にこの状態になったら、ただちに作業を中止して仮眠や休息を取る必要があります。

  • フェーズII
  • 安静時、リラックスした状態ですが、積極的に注意をしていないため見落としが起きることがあります。危険な作業や集中力が必要な作業では、その前に緊張を高めるようにしてフェーズIIIへ引き上げます。

  • フェーズIII
  • 脳が積極的に動いている状態で、仕事に集中していて、注意力も非常に高い状態です。頭脳も明晰で仕事の効率も非常に高い状態ですが、このフェーズIIIは長続きせず、しばらく経つとフェーズIIに落ちてしまいます。

  • フェーズIV
  • 過緊張の状態で想定外の事態に直面して立ちすくんでしまった時や怒りで頭に血が上った状態です。注意は目先の一点に固着し、冷静な判断ができず大脳はパニックを起こします。

 


表1 覚醒水準

表1 覚醒水準


 

覚醒水準に影響する身体的特性

人には以下のような生物としての生理的機能に支配されています。この生理身体的特性は人の注意力に大きく影響します。
 

  • サーカディアンリズム
  • 人は体内に時計を持っていて、この体内時計のリズムを「サーカディアンリズム」と言います。その主な機能は、眠りと体温のコントロールです。体温が高いときは、覚醒水準が高くなり、活動性も高く、機能的に動くことができます。逆に体温が低くなると眠気を感じ、
    注意力が低下します。平均的な成人は体温が夜明け前に低くなります。そのため夜勤の明け方の作業はエラーが起きる確率が高くなります。例えば、病院の宿直勤務、夜勤での航空機の保全作業、明け方の自動車の運転などでは不注意による事故が多発しています。

  • 加齢
  • 加齢により人の身体的機能は低下します。中でも視覚、聴覚、平衡感覚、皮膚感覚、内臓感覚、痛覚などの感覚・知覚は著しく低下します。例えば明るいところから暗いところに行くと、初めは何も見えなかったのが徐々に見えるようになり、暗順応といいます。眼が暗所に対して感度調節をし、暗いところの弱い光も捉えられるように目の感度が上昇する機能
    です。暗順応は高齢者と若者の違いが顕著です。
    高齢者は
    暗順応に要する時間が長くなる
    暗順応による感度上昇に限界があり、若年者ほど高感度が得られない

    という二つの面で機能が低下します。

  • 疲労
  • 人は疲労により覚醒水準が低下しエラーを起こしやすくなります。疲労の最大の問題は、重大な事故を起こすまで、疲労
    していることに「本人も気がつかない」ことです。この疲労は加齢にも関係し、加齢とともに疲労回復の時間は多く必要です。自分がどのくらい疲労しているのか当人が気がついていないため、強制的に休息を取らせるような工夫が必要です。

 

不注意の原因

不注意の原因1 認知バイアス

人はものごとを認知する機能にバイアスがかかっていて、これが時として不注意の原因となります。
 

  • 見たいものを見る
  • 人は外界の情報を受ける際に、それまでの流れから「この情報は○○だろう」と推測します。これは都度入って来る情報のその時点で判断するよりも事前に予測した方がすばやく判断できるからです。太古には危険な野生動物と共存してきた人間は、茂みの動き、物音、臭いから外敵の可能性を予測します。そして予め予想しているため、いきなり外敵に襲われても瞬時に逃げることができます。つまり動きや物音など情報から対象を推測しています。
    現在でも人は対象を認識する際、その前後の情報から推測して認識します。例えば図3のように12と14に挟まれた文字は「13」と認識し、AとCに挟まれた文字は「B」と認識します。しかしこの2つは同じ図形です。
     
    図2 前後の情報から変化する例
    図2 前後の情報から変化する例
     

    医療現場では看護師は患者の容態や診察の流れから次の意志の指示を予測します。その際、予想と違う指示が医師から出された時、聞き間違いが起きます。
    医師が電話で薬を半筒(アンプル2分の1本)投与するように指示したところ、それを受けた看護師は、指示が三筒(3本)と問こえたために指示の6倍量の薬が患者に投与されてしましました。このような期待聴取 (wishful hearing)は不注意の大きな原因です。

  • 正常化の偏見
  • 正常化の偏見(normalcy bias)とは、人は保守的で異常を容易には認めないことです。そのため、明確な証拠がないと次の行動を起こしません。人には現状維持を好む傾向があり、例えば自然災害で今いるところが危険な状況に陥っても、何らかの理由をつけて留まろうとします。その結果、避難が遅れ甚大な被害が出ます。

  • こじつけ解釈
  • 同様に人は自分に入って来る情報が自分にとって都合の悪い情報だと不安を感じます。その不安を解消するために、情報を自分に都合のいいように解釈します。これをこじつけ解釈(story Building Strategy)と言い、人はこじつけ解釈で納得すると、それ以上は疑問を持たなくなります。
    1999年の横浜国立大学医学部附属病院での患者取り違え事故では、医師は、患者の髪の長さが2日前より短いことに気がつきました。しかしおそらく散髪したためだろうと自らを納得させました。また肺動脈カテーテル挿入の際、肺動脈圧の測定値が以前と異なり正常になっていましたが、麻酔薬の影響で測定値が良くなったと考えました。

  • 記憶のバイアス
  • 人の記憶は時間の経過とともに劣化します。あるいは記憶を思い出すまでの間に、他のことに気を取られていると記憶内容が変質します。ある看護師は薬を容器に詰めていた時、同僚の看護師から別の薬についての質問に答えたため、正しい薬でなく質問を受けた薬を詰めてしまいました。

  • 学習によるバイアス
  • 以前学習した記憶がエラーの原因となる事があります。例えば、新しい作業手順に変わった時は、古い作業手順を積極的に忘れる必要があります。しかしコンピュータのデータを削除するように、頭の中の記憶は簡単に消すことはできません。その結果、緊急時やぼんやりしているときに古い作業手順を思い出し、うっかり実行してエラーが起きます。

 

不注意の原因2 選択的注意

人が注意する能力には限度があります。そしてひとつのことに集中すればするほど、他への注意力が弱くなります。この注意は人が関心があるものに向かいやすい特微があります。ある病院の看護師は、投薬の際「測定値-与薬量」の対応表を見ることに注意を奪われ、患者の名前を間違えてしまいました。
このように人は、注意力を自分の意図した対象に強く向けることができますが、その分他への注意は散漫になり、これが不注意の大きな原因です。ただし注意を向けていない対象にも五感は働いています。
 

  • 忘年会現象
  • 忘年会などで宴会も佳境に入り思い思いのメンバーが車座になって、それぞれ話に夢中になっています。この時、会場には自分の相手の声よりも大きな声で話をしている人が何人もいます。そのため相手の話はそれらの声にかき消されて聞こえないはずです。ところがあなたは相手の話声がはっきりと聞こえ、相手と熱心に話し込んでいます。なぜ周りの声より小さい話し相手の声がはっきりと聞こえるのでしょうか。
     
    図3 会話が飛び交う中でも聞こえる
    図3 会話が飛び交う中でも聞こえる
     

    これは、人は聴覚に入ってくる複数の情報の中から、注意を向けたものだけを選択的に聞き取ることができるためです。これを「カクテルパーティー現象」といいます。まあカクテルパーティーは我々日本人にはあまり馴染みがないので、「忘年会現象」と呼ぶのがよいかもしれません。

  • 注意を向けていない耳には何か聞こえているか
  • ある心理学者がこの忘年会現象について実験しました。被験者にヘッドフォンをつけて右と左から別々の言葉を同時に聞かせました。そして右のヘッドフォンから入る言葉を被験者に口から言わせて、右の耳を注意、左側の耳を不注意の状態に強制的にしました。
    その結果、注意を向けなかった左耳は、どんな言葉が聞こえたのかはわかりませんでした。話し言葉を英語からフランス語に変えても被験者は気が付きませんでした。しかし左の耳も声が男の声から女の声に変わると気づきました。つまり両方の耳は物理的な音声は聞き取っていました。しかし言語の理解は注意を向けた右耳しかできませんでした。

 
この結果から人は光や音など感覚器官に入ってくる情報を全て認識しています。ただし認識の程度は浅く、言葉は理解していません。その中で注意を向けたものだけが、言葉の意味など高度な認識や判断の対象となります。五感に入る情報を全て認識し判断していると人間の限られた情報処理能力がパンクしてしまうからです。この識別・判断など高度な認識の対象を制限する働きを「選択的注意」といいます。
 
この働きは夜道を歩く時の懐中電灯に例えられます。足元を中心に、時々前方や左右に懐中電灯の光を当てるのが注意の配分です。そこで光を1ヵ所に固定すると周りの状況がわからなくなります。この「注意の一点集中」は周りの状況を見落としやすく危険です。初心者が車を運転すると前方を注視して周りを見る余裕がありません。一方元F1ドライバーの中島悟氏が運転したところ、視線はたえずあちこちに移動し一点に留まることがありませんでした。
 

【事例】 運転中のヒヤリハット
自動車の運転は、刻々と変わる周りの状況に対応して、アクセルやブレーキを操作しなければなりません。しかし運転中に注意力を他のことに使うと、運転への注意が不足し、ペダルの踏み間違いなどが起きます。特に駐車は、自動車の方向転換や周りの車の状況、前進と後進の切り替えなど複数の操作を一度に行うため、不注意が起きやすい状況です。

  1. 駐車場から出る時に歩道を塞いでしまったので、一度後退。そして人が途切れたので アクセルを踏み込んだがギヤがR(後退)だった。
  2. 切り返しを何度も行ったため混乱し、Rで思いっきりアクセルを踏んだ
  3. 窓から顔を出してバック駐車する際、足が届かずブレーキのつもりでアクセルを踏んだ
  4. コンビニで前向き駐車し、出る時にいつもの習慣でDで発進した

図4 前進・後退を繰り返す駐車

図4 前進・後退を繰り返す駐車

 

  • 他のことに気を取られる

意識が明瞭で注意力が高くても、注意の大半が他のことに向けられていれば、本来のことに対して不注意となります。車のわき見運転などがこの例です。
1972年イースタン航空401便のロフト機長は、マイアミ国際空港へ着陸する際、着陸態勢に入り着陸装置を下ろしたのに表示灯がつかないことに気づきました。そこで旋回して高度600メートルで水平飛行に移り、副操縦士が調査しました。また、たまたま整備士がコックピットにいたので調べさせました。全員で調査に夢中になっている間、誰も操縦しておらず機体は高度がどんどん下がっていました。ついにエブァーグレーズの湿地に突っ込み、ロフト機長を含む99人が死亡しました。「これはどうなっているんだ」これが機長の最後の言葉でした。
 

不注意の原因3 パニック

突然の恐怖や極度の不安に直面すると、人はパニック状態になります。わけがわからない状態に陥り、いつもなら絶対にしないようなことを無意識のうちにしかも強力に行ないます。これは生物として生き残るために適応した行動です。このような行動は非常にリスクが高く失敗する可能性も高いのですが、危険な生物に襲われた時うまくいけば生き残ることができます。
 
パニックになると、一番際立つ情報のみに注意を限定し、人の認知機能はその情報のみに特化します。(認知的焦点化)自律神経系が活性化し、活動水準は最高レベルに達し、動作は速く最大限の筋力が発揮されます。(火事場の馬鹿力)この時の行為は一方向に限定され、後戻りや逡巡はありません。躊躇すれば命を落とすような状況なので遮二無二行います。しかしその方向が間違っていれば命を落としたり、大事故につながります。
 
パニックはめったに起きないので事前に対処するのが容易ではありません。最も効果的なのは、パニックになるような状況を実際に何度も体験することです。そうすれば本当にそのような状況になったときでも冷静に対処できます。しかしこのようなことを実務レベルでできるのは、自衛隊や警察といった特別な任務を行う組織ぐらいです。一般的な組織でできるのはシミュレータや予行演習ぐらいです。今後VR技術が進歩すれば仮想空間の中で迫真性に富んだ訓練ができるかもしれません。
 
【パニックに対処するための方策】
パニック状態にならない、あるいはパニック状態から速く脱出するためには、いつもの自分に戻る方法を予め知っておくことです。例えば「その場所から一時的に離れる」「一時的に判断や行為を停止してみる」「自分の姿を鏡などに映してみる」などです。
 
あるいはどんなときにパニックになるかを想定してメンタルトレーニングをします。メンタルトレーニングや実地訓練をすることで、パニックになるような事態に直面した時、考えずに「からだが自然と動く」ようになります。そこまで時間をかけて行うのは軍隊や警察のような組織でないと無理なので、現実には予め起こりそうな事故を想定してメンタルトレーニングを行うのが精一杯です。(メンタルトレーニングの方が避難訓練を儀式的に行うよりも効果が高いとも言われています。)
 
あるいは、非常口の表示のようにパニックになりそうな状況になったら対処すべきことを表示しておきます。パニック時は人の認知活動が一転に固着する(焦点化)ので、それを想定して、一目で正しくわかる表示にします。また余計な情報は捨て、必要な情報のみを目立つように表示します。
 
図5 どちらへ逃げますか?
図5 どちらへ逃げますか?

 

不注意の原因4 注意力の限界と意識の迂回

選択的注意で述べたように、人は同時に複数のことに注意できません。1度に1つのことしか注意できないため、1度にいろいろなことに注意しようとすれば、どれも不注意になってしまいます。1つの行動をするときには1つの注意で作業することが望ましく、昔から「一時に一事を」が大切といわれています。また注意箇所が多ければ個々の注意力は浅くなり、注意箇所が少なくなれば個々の注意力は深まります。
 

  • 考えごと
  • 作業中に、家庭やレジャーなど仕事以外のことを考えていると、作業に対する注意がおろそかになりエラーを起こします。特に気になる悩みがあると、作業中に頻繁に思い出して注意がおろそかになります。深刻な悩みごとがあると、悩みごとが気になって仕事中も放心状態になり、人が話していることも「上の空」になります。これではいつエラーが起きてもおかしくない状態です。

  • 意識の迂回
  • 会話中は、その話題に意識が集中しています。しかし日ごろから心の中で強く気になっていることがあると、会話中に突発的にそのことを思い出します。あるいは気になっていることを思い出させるようなものを会話中に見たり聞いたりすると、会話の間に気になっていることとを一瞬意識します。しかし、次の瞬間には会話中の話題に意識が戻ります。このように関係のないことに一時的に意識が向かうことを「意識の迂回」といいます。

 
この意識の迂回は、日々の作業でも起きます。通常は作業方法や品質などを作業手順に従って、各手順に次々と意識が移りながら作業をしています。その途中で日ごろから強く思っている心配ごとをふと思い出すと、一時的にそのことに意識が向かい、次の瞬間に本来の作業に意識が戻ります。この意識が迂回しているときに事故が起きることは稀ではありません。
 

不注意の原因5 あせり

「ある時問までに作業を終了してしまいたい。」
「ある時問までに届けなければならない」
「汽車や飛行機の出発時間に問に合いそうもない」
「交通渋滞のために予定時間を切りそうである」
「家族が交通事故のためけがをして入院したという。早く病院に行って症状を知りたい。」
などのため、人はあせり、すなわち焦燥状態になります。
 
交通事故で入院した家族の病院へ急いで見舞いに行く途中、赤信号を無視して死亡事故を起こした例もあります。優しい、思いやりの深い人だからこそ発生するミスであり、それ故に防止は容易ではありません。加えて日本人の精神風土に「急ぐ心」「せっかち」があるため陥り易いといえます。
 

【衝動的な人は誤りやすい】
 人のタイプを熟慮型と衝動型で分けると、熟慮型の人は時間をかけて答えを見つけるため、誤りは多くありません。しかし衝動型の人は、短時間で答えを出すためしばしば誤った答えを出します。一般的に幼児は衝動型で、理由は自分の頭の中であれこれ考える習慣がまだないために、思いついたことはとにかくやってみないと次のことを考えられないからです。日本とアメリカの子供を比較すると、日本の子供の方がずっと早い年齢で熟慮型が出てきます。「誤らないように」という教育が日本では早くから行われているためかもしれません。
 

不注意の原因6 周縁的動作

溶接作業を続けている途中で、無意識に身体の向きを変えることがあります。あるいは床にひざまずいて機械を修理している途中で、無意識に背筋を伸ばすこともあります。このように作業の途中で何気なく身体の向きを変えたり立ち上がったりする動作は、記憶に残らない極めて浅い意識下で行われています。本来の作業である溶接をしたり、機械を修理することを強く意識している時に、体の向きを変えたり立ち上がったりする動作は、本来の作業の意識の片すみ(周縁)で行われる無意識に近い動作です。
 
そのため注意力は低く、事故を起こす可能性が高い行為です。
 

不注意の原因7 眠気

  • 睡眠サイクルと体内時間

人間の体内時計は25時間で、毎日朝日を浴びた時にリセットされて24時間サイクルに修正されます。日光の全く入らない地下室のような環境で何日か過ごす実験を行ったところ、被験者の体内時計はずれていき、1日が50時間になった例もありました。それでも睡眠時間は1日の30%という割合は変わらず、1度に20時間以上眠った例もあります。
 
この睡眠は規則正しく取らないと、体内時計がずれて疲労が増加します。逆に夜勤など体内時計と日光に当たるサイクルが合わない場合は、照明環境を工夫して、体内時計を勤務に合わせれば覚醒状態を維持することができます。

アメリカでは1930年代、長距離トラックの運転手は、運転時間は10時間までとし、その後8時間の休息を取ることを定めた法律が制定されました。しかしこの18時間サイクルは体内時計と合わず、これを続けることでどんどん時間がずれていきます。実際に長距離を規則通りに運転したドライバーと規則を無視して疲れたら眠ったドライバーを比較したところ、規則通りに運転したドライバーの方が疲労度がはるかに高かったそうです。
 

【体内時計と睡眠サイクルを合わせる】
私たちの体内時計は朝、日光を浴びることでリセットされます。従って、夜勤では人為的に明るい朝のような環境をつくると体内時計がリセットされ、昼間と同等の覚醒度が得られます。(この場合、夜勤者が睡眠に入る際は、夜のように真っ暗な部屋で寝ることも必要です。)
私たちが日中浴びている光はかなり多く、屋外では晴れていれば5万ルクス、曇りでも1万ルクスの照度があります。しかし室内では明るく照明されたオフィスでも500ルクス、工場では200ルクス以下というところもあります。
 
では、覚醒度を高めるにはどのくらいの照度が必要なのか、工場のコントロールルームにそっくりの環境をつくって実験したところ、1,000ルクスの照度があれば覚醒度は昼間と変わらず高く、夜勤者を襲う周期的な眠気も抑えられることが分かりました。この実験では警報への反応の遅れが40%も減少し、眠気のために仕事が遅くなることも減りました。ただし人工的な照明が直接目に入ったり、内装材に強く反射してまぶしさでストレスにならないような工夫が必要です。
 
1988年7月イラン・イラク戦争において自国船舶を守るためにペルシャ湾を警戒していたアメリカ海軍のイージス艦ヴィンセンスは、イラン空軍の戦闘機の挑発的な行動の度に警戒態勢を取っていて乗組員は疲労でへとへとになっていました。ちょうどその時ドバイ行きのイラン航空のエアバスA300が正規の飛行コースを上昇中でした。
しかし疲れとストレスを溜めたオペレーターは同機をイラン空軍の戦闘機と誤認し「目標は下降中、攻撃を仕掛けてくる」と艦長に報告しまた。そしてヴィンセンスはイラン航空655便にミサイルを発射、同機は撃墜され、乗客、乗員290人が犠牲となりました。この290人は航空事故史上8番目に多いものでした。
 

  • 環境が眠気を引き起こす
  • 人の覚醒度は、五感に対する刺激が少なくなればなるほど低下します。特に明るさは覚醒度に大きく影響します。また温度、音、振動なども覚醒度に影響します。
     
    【会議室は覚醒度を下げる要素にあふれている】
    経営陣への重要なプレゼンテーション、しかし立派な重役用の会議室は会議の重要度とはうらはらに覚醒度を低下させ、居眠りを引き起こす要素にあふれています。

  • 暗さ
  • プロジェクターに合わせて室内の照明を暗くすれば参加者の覚醒度は低下します。会議が昼食後であれば多くの参加者が居眠りを始めます。重厚な木目調の重役用会議室は、室内は暗く視覚への刺激が少なく、一層眠気を催します。
    経営陣が夢うつつで説明を聞いて意思決定を行うリスクを考えれば、大画面の液晶モニターを購入し、明るい部屋で会議するためのコストは決して高くありません。

  • 温度
  • 顔は低温に敏感なため、部屋の上部は温度を下げ、部屋の下部は温度を上げる「頭寒足熱」は理にかなった方法です。しかし会議室を含めたオフィスの空調は、天井吹き出し式が多く、冬は暖房の暖かい空気は上に滞留し「頭熱足寒」になってしまいます。

  • 発表者の話し方が淡々と一本調子で、しかも内容が分かりにくく、的を得ていない場合、音による脳への刺激が弱く、参加者はいつの間にか眠りに落ちます。
    「大きな声で抑揚のある話し方」、
    「メリハリをつけ、時には小さな声で相手の注意を引きつける」、
    「声だけでなく動画や音楽を組み合わせて注意を引きつける」
    などの工夫をすれば、覚醒度を高めることができます。そのためには相当プレゼンを練り込む必要がありますが、大切な企画を夢うつつで判断されるくらいなら、時間をかけて準備する価値はあるのではないでしょうか。

 
【快適な環境が覚醒度を下げる】
コンピューター制御とセンサーなど検知システムの進歩により、化学プラントや発電所の運転は中央制御室で行うようになり、必要な情報はすべてモニター画面に表示されるようになりました。
 

ある化学工場のコントロールルームはディスプレイに様々な情報が表示され、部屋の明かりは目を休めるために消され、オペレーターは空調の効いた部屋で座り心地にいい椅子に座って一晩を過ごします。工場の責任者は「一晩中スクリーンから目を離さずに情報をモニターすること」を求めています。しかしオペレーターに聞いてみると
「帽子を目深にかぶって ぐうぐういびきをかいていればよいから楽なもんさ。必要があれば装置が起こしてくれる」
と語っています。
 
この工場の管理者は、寝ぼけまなこのオペレーターが爆発性の化学物質のプラントや高価な設備に不幸な決断を下す可能性があるとは思ってもいませんでした。
 
刺激が少ないという点では、高速道路を走るトラックよりも、レールに沿って走り、追い越しや渋滞のない列車の方がより刺激が少なく危険です。さらに暗いコックピットに座り、計器の表示以外は信号すらない大空の飛行機の方がさら刺激が少なくなっています。
 
午前3時、ある航空会社のDC8型機がシカゴ・オヘア空港へ着陸するため進入体制に入りました。しかし同機が向かったのは滑走路
でなく、ターミナルビルでした。気づいた機関士が副操縦士に警告したところ、寝ぼけた副操縦士から返ってきた答えは「異常なし、このまま進入します」でした。機長も副操縦士も半分眠っていることに気づいた機関士は必死で叫び、我に返った機長により無事に着陸しました。
 
また東海岸からロスアンゼルスに向かっていたボーイング747は、コックピットのクルーが全員熟睡し、自動操縦のままロスアンゼルスを超えて太平洋を飛び続けました。航空管制官の呼びかけにも答えず絶望かと思われましたが、無線でコックピットのチャイムを鳴らしたところクルーを起こすことができ、燃料が切れる前にロスアンゼルスに戻ることができました。
また太平洋を渡ってシアトルに向かった旅客機はが地上の呼びかけに応答しなかったため、カナダ空軍の迎撃機が緊急発進しコックピットに強烈な光を当ててクルーを起こしました。
 

  • マイクロ睡眠

高速道路を運転しているドライバーの覚醒状態を脳波計などで調べると、5~10秒の間、マイクロ睡眠と呼ばれる脳が寝ている状態が見られました。この時、ドライバーは目を開けて運転しているのですが、脳は眠っていたのです。徹夜運転で眠気と戦っているドライバーは、明け方には起きて運転しているようでも、小刻みなマイクロ睡眠に陥り、5~10秒の間はドライバーが眠っている状態で車は走っています。このマイクロ睡眠がついに深い眠り、居眠り運転になってしまうことすらあります。
 
スウェーデンで列車の機関士を調査したところ、昼間は全員が高い覚醒度でした。しかし夜に入ると11人中6人が眠り込み、2人はマイクロ睡眠のために警告信号を見逃しました。
 

エンジニアの誤判断の理由

技術的な知識が豊富で判断力を備えたエンジニアがなぜ誤判断するのでしようか。実際、エンジニアは与えられた業務に対してしっかりと考えて判断しているはずです。それでも誤判断が生じるのは以下の理由によります。
 

  • リーダーシップ能力不足
  • 積極的に仕事をしているが、全体を整合させるリーダーシップの不足
    (過信、自分勝手、関係者間の未調整)

  • 危険予知能力不足
  • 積極的に仕事をしていても危険を予知する能力が不足
    (パニック、考え落とし、無知)

  • 部分的思考停止
  • 積極的に行っているが、一部に思考停止がある
    (看過、盲信、無責任)

以上3つの要因がエンジニアの誤判断の3/4を占めると言われています。
他にも、

  • 全面的思考停止
  • 消極的な姿勢で全面的に思考停止していた
  • 無思考状態
  • 単にルーティンの仕事を行い、思考していない
    (非定常感不足、反応能力不足、現状認識不足)

等があります。
 

注意力を高める方法

注意力を高める方法1 注意点を決める

現場ではよく「注意してやれ」「集中力が足りない」などと言われます。これら「集中力が足りない」、「注意力が足りない」とは、心身機能の“どの機能の活動不足“により起きるのでしょうか。
 
集中力を高め注意を集中するとは、特定のものを選び出し、そこに意識を集中することです。この意識というものは主観的で、他人から客観的に観察できないため指導は容易ではありません。具体的には注意を集中するには、次の3つのことを理解し、実行できるように訓練します。
 

  • 注意点を選ぶ
  • 作業を進める前に、どこに気をつけなければならないか注意点を探します。あるいは事前に分かっている注意点を思い出します。この注意点は作業手順書では「急所」ともいいます。たまにしか行わないような非定常作業では、注意点を分かっていないため、まず注意点を探します。一方普段から同じ作業を繰り返し行っている定常作業の場合は、あらかじめ分かっている注意点を思い出します。この注意点の発見、あるいは選定には、作業内容、設備や治工具などの十分な知識と作業や設備の操作などの経験が必要です。

  • 手順ごとの注意点(急所)をつかむ
  • 作業を進めるとき、何に注意しなければならないか「急所」を決めて作業にかかります。しかし中には急所のわかりにくい作業もあり、急所を把握するには経験と知識が必要です。あるいはトラブル処理のため、あわてていると手順が逆になったり、急所を忘れたりします。

 
うっかり急所を飛ばしてしまうのは以下の場合です。

  • 先が読みにくい作業
  • 急ぎ、あわてたときの作業
  • 小さなトラブルで、知りながら手を抜く作業

先が読めない作業や急いでいる作業こそ、ひとつひとつの作業の注意点を確実に抑えて作業を行い、後戻りにならないようにすることが重要です。これには日頃から、急いだとき、あわてたときに「どのような急所や注意点を見落とすのか」気をつけて見ておき、問題を発見する力を養います。
 

  • 視点と作業点を一致させる

注意を向ける先、つまり視点と作業点を一致させれば、作業に対する注意が高まります。しかし人は注意点に目を向けていても、ぼんやりと見て注意が浅い場合があります。そこで指差呼称により視点と作業点を一致させ、注意を高めます。指差呼称は指差された対象に目を向けて呼称することで脳も活性化します。

【事例】 後で禁止令
航空会社の新人整備士が機体の整備が終わって、その個所のパネルを閉めるかどうかを先輩整備士に聞いたところ「後でまた作業をするから、そのままにしておいて」と言われました。そしてネジで固定せずパネルだけ閉めました。ところが後で行う作業がなくなったため、そのままの状態で飛行機は出発しました。幸い他の整備士が点検した際にネジが閉まっていないことが発見されて事なきを得ました。「後でやる」というのは、後になったときにその時の状況を忘れてしまうことが多く非常に危険です。面倒でも後でなく「今」行います。
 
【方法】 手順書に注意点を明記する
その作業を行う際にどこに注意すべきか、作業者は分かっているようで分かっていません。また人間は複数のことに一度に注意することができず、もれが生じます。そのため作業を行う際はどこに注意すべきか、手順書に明文化します。もし複数の箇所に注意しなければならない場合は、複数の個所を順に注意するようにします。
 
【方法】 注意表示を減らす
注意力を高めようとして、あちこちに注意表示を行うのは、注意力が分散して逆効果になります。不注意の可能性があるからと言って、あちこちに見落とし注意、頭上注意と掲示すれば、それが当たり前となって注意表示に気を留めなくなります。「過去に無見落としがあったから注意して見て欲しい」、「頭をかがめないと頭をぶつけるから頭上注意」など本当に必要なところだけを表示します。
 

注意力を高める方法2 リズムをつくる

注意力を集中させるには、意識して心を緊張させることが必要です。しかし、緊張状態は長続きせず、緊張度が強ければ強いほど、長時間持続するのは困難です。注意力が必要であればあるほど、「緊張→ゆるめる→緊張一ゆるめる」というリズムを手順のなかに取り入れます。
 

注意力を高める方法3 身体的特性を理解する

不愉快、イライラや、疲れ、病気などの倦怠感があるとき、注意が集中しません。体がこのような状態のときは、危険な作業はできる限り避けます。やむを得ず行う場合は以下のようにします。
同僚、または上司にイライラ、不倫決なことをぶちまける。(それだけで随分心が休まります。)
時間をかけて、注意を集中するための3つの条件をチェックする。
多少時間がかかっても、作業を確認しながら行う。特に投げやりな気持ちで作業した時はとても危険である。
 
図6 イライラしたときは…
図6 イライラしたときは…

 

【対策】 仮眠を取る
疲労や単調な作業の為、覚醒水準が低下している場合、無理に作業を続けるよりも仮眠を取ります。頭がすっきりして覚醒水準が上がり、注意力が高くなります。ただし仮眠は20分以内にします。
 
車の運転では、一般道よりも高速道路の方が眠気が強くなります。それは高速道路の方が信号がなく、カーブも緩やかなため運転中の操作が少なく、ドライバーへの刺激が少ないためです。それでは高速道路の自動車と鉄道、飛行機の運転を比較するとどうでしょうか。
 
鉄道は高速道路のような追い越し車線もなく、確認するのは信号のみで自動車よりも単調です。飛行機は巡行飛行に入れば、信号機すらなく、自動操縦に入れば機体の操作すら必要ないため、鉄道以上に刺激がありません。しかも国際線では時差ボケもあるため睡眠が不規則になります。それでも重大事故が少ないのは、正副二人の操縦士がいるためですが、それでも二人とも眠りに落ちてしまい、あわやという事態は頻発しています。
 
【事例】 重要な作業が終わった後の気の緩み
航空会社では機体の整備の際に、複雑な調整作業が終わった後や、重要な部品をやっと取付けた直後など、ほっとした時にミスが起きます。書類の記入箇所を間違えたり、片づけを忘れたりしています。これは緊張が解けて油断が生じたことと、それまで最大限注意力を使っていたために、注意力が低下したためでした。
 
【対策】 仕事の切替で適度な緊張感を維持する
同じ仕事を繰り返すと、緊張感がなくなり注意力が低下します。そこで仕事を適度に切り替えて仕事の内容に変化をつけて単調さを減らします。こうして緊張感を維持することで注意力を保ちます。
 

注意力を高める方法4 注意を減らす

作業に熱中した時でも、目の届く狭い範囲なら人は注意点をつかんでいます。しかし広い範囲で作業を行うと周りに危ない注意点があっても気がつきません。そして作業に熱中すると視野がさらに狭くなり、周りはピンボケ状態になります。
 
このような時は、段取りの段階で“危ない”ものにはカバーしたり取り除く、あるいは回しても動かなく(スイッチを切っておく)しておいて、1点に注意を集中できるようにします。また人は、同時に2つの注意点に気配りするのは苦手なので、段取りと作業手順で注意点を配分し、同時に2つの注意点(急所)を設定しないようにします。
 

【対策】 一度に一つの仕事を行う
仕事が立て込んでいる時、マルチタスクで一度に複数の仕事をすれば仕事が早く終わると思うかもしれません。しかしスタンフォード大学の研究によればマルチタスク傾向の人はシングルタスク傾向の人に比べてタスクの切替がうまくいかず、同時に処理を進めているつもりでも生産性は低下していました。しかも一度に複数のタスクを行うため、ただでさえ不足しがちな注意力のリソースが分散され、不注意のリスクが高くなっていました。つまり一つ一つの仕事をかたづけていった方が仕事のスピードも質も上がります。
 
【対策】 同じ仕事はまとめて行う
同じ種類の仕事は、注意すべき点も同じことが多く、まとめて一緒にやった方が注意に頭を使うボリュームが減ります。もし同じ種類の仕事をバラバラに1日に何度か分けて行えば、毎回同じところに注意しなければならず、その分頭を酷使します。一日の作業計画を立てて、同じ仕事はまとめて一度に行うようにします。
 
【対策】 専用のツールキットをつくる
他の現場に作業に行くとき、必要な道具や設備をばらばらに集めて、車に積んだり台車に乗せて移動すれば、必要なものが揃っているかどうかをしっかり注意しなければなりません。実際、現場に到着したら「工具が足りない、持ってきたものが違っていた」などは日常茶飯事です。
 
そこで専用の収納箱をつくり必要なものを全てキット化します。キットは常に完全な状態にし、収納キットを使用する前に必ずチェックリストに基づいて必要なものがすべて揃っているか確認します。こうすることで道具や設備の管理に注意を振り向ける必要がなくなり、その分他のことに注意を振り向けることができます。
 
【対策】 ペア作業
伝票の入力作業やデータのチェック作業では「見る→判断する→入力→チェック」といった流れで行います。その際、一人の作業者が「判断する→入力→チェック」を行うと判断を間違えても気づきません。また「見て、判断して、入力する」という「動作→判断」という一連の作業を繰り返すため、勘違いが生じやすくなります。そこで2人で作業を行い、一人が「見る→判断する」、二人目が「入力」し、そして一人目が「入力をチェック」すれば、判断、確認業務と入力業務を分けることができます。その結果、それぞれが担当に専念でき、注意力が高まります。
 

注意力を高める方法5 外化

暗算ではできそうもない計算をするときは、我々は筆算をします。つまり頭の中で行っていたことを紙に書き表します。あるいはぼんやりしていたアイデアを紙に書き出すと、はっきりします。これを「外化」と呼びます。この外化には、二つの機能があります。
 

  • 忘れることで失われる認知機能の補強

頭の中だけで処理しようとすると、処理過程の内容は短期記憶に保存することになります。しかし人の短期記憶の記憶容量は限られ、保持時間も長くありません。そのため処理の過程で内容が忘れられ、うまく処理できないことがあります。頭の中だけで処理できない量の計算や論理的思考を行う場合、一部を書き出して外化すればエラーが起こるのを防ぐことができます。
 
例えば、
・紙に書き出す
・口や動作に出す
・仲間に話す
等を行います。しかしどの段階で外化するかは、個人の処理能力と記憶力によります。
 

  • 内部表象の意識化・明確化

あいまいな内容を、音、文字、動作で表し「見える」ようにすれば、意識化・明確化できます。そこからさらに思考や計画を練り込むこともできます。一方、言葉に表し「見える」ようにすることは、内容がそこで固定化され、固まってしまう恐れもあります。時にはこれが「思い込みエラー」の原因となります。
 
【対策】 リスト化
チェックリストのようなリストを作成し、仕事の内容や順序、スケジュールを紙に書くことで、頭の中のことをリストに外化できます。例えば、1日の仕事を前日にTo Doリストに書いておけば朝一番に何をどの順番でするべきかわかっています。そのため「何をすべきか」に注意しなくて済みます。仕事の優先順位を考えたり、漏れがないか考えたりする必要がないため、仕事そのものに注意を集中できます。
 
同様に持ち物リストや準備リストをつくっておけば、持ち物を用意したり作業の準備をしたりする際に、持ち物や準備は頭を使わないで機械的に作業できます。その結果、他のことに注意力を振り向けることができます。
同様に緊急時の対応や問題が起きた時の報告経路などもリスト化すれば、緊急時に「何をやるか」でなく、「どうやるか」に注意力を振り向けることができます。
 
【対策】 赤字
文章やデータを変更した場合は、黒字のままだとチェック者が見落とす可能性が高くなります。そこで赤字にして他のチェック者が容易に確認できるようにします。
 

覚醒状態を維持する

いくら不注意を減らすように工夫しても作業者が寝ていては不注意はなくなりません。そのため作業者の覚醒度を高める努力が必要です。特に夜勤は体内時計と合わないため、眠気によりミスや不注意が起きます。この覚醒状態を高めるために以下の方法があります。
 

  • 照明を明るくする
  • 工場の照明は、昼間の室内の明るさと比較しても暗く、覚醒度が下がります。特に夜勤の場合、明け方にかけて体内時計のために体温が低下し、眠くなります。それを防ぐために、1,000ルクス以上の明るさで照明します。最近は低消費電力のLED照明が主流となり、明るい照明を行っても電気代は少なくなっています。

  • 画像だけでなく、音や振動などの情報
  • 設備を操作したり、監視する場合、できる限りモニター以外に音や振動などの情報も確認するようにします。複数の刺激を受けることで覚醒度が上がり、問題を発見しやすくなります。またモニターだけではわからない僅かな不調も振動や音をみればわかることもあります。

 

まとめ

このように不注意の原因を考えると、不注意によるヒューマンエラーは、エラー行為そのものよりも、その前に不注意が生じる状況があることが分かります。つまり単調な作業や疲労など不注意が起きるような状況になれば、誰が作業しても不注意になります。その状況を放置すればいつか重大な不良や事故が起きます。従って不注意による不良や事故が発生したら、エラーが生じた状況を調査し、そのような状況にならないように対策することが必要です。
その状況の改善として、以下の3つの視点があります。

  1. 生理的状況 覚醒殿低下の対策
  2. 体内時計のずれや疲労が原因で作業中に覚醒度が低下する場合、勤務サイクルの見直しや照明などの作業環境、適切な休息や仮眠などにより、覚醒度を高めます
  3. 作業プロセスの改善

注意点を明確にしたり、注意力の分散を防ぐなど作業プロセスや手順を改善し、注意すべき点に注意するようにします。
 
注意力に頼らないように作業を改善
 
何を注意すべきか、注意すべき項目をチェックリストなどに外化し、注意を払わなくてもリストに従えばできるようにします。


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